Martin 2-17
戻る新潟県にお住まいのY.I.さんから超ビンテージなギター・リペアご依頼をいただきました(シリアルナンバーから1928年製であることがわかりました)
ご希望のリペア内容は下記の通りです
1) フレット打ち直し
2) ナット交換(エボニー)
3) サドル交換(象牙)
この時代のギターのフレットは、バーフレットと呼ばれる横から見ると長方形のものが使用されております。同じ形状のフレットを見つけることは非常に困難で、いろいろな案を検討した結果、オリジナルのフレットを埋木で全体に高くして再利用する方針で進めることにしました。
リペア前のフレット状況確認
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- 1. ネック側からの写真です。1弦側(左)はフレット高が
- 1. ネック側からの写真です。1弦側(左)はフレット高が
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- 2. 弦の影を見てみると1、2弦のフレット高がほとんどないことが
- 2. 弦の影を見てみると1、2弦のフレット高がほとんどないことが
弦待避 ~ ナット取り外し
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- 1. 装着されている弦をネックに巻きつけて待避しておきます。
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- 2. ナットはコンとたたくとすぐにはずれました。古い接着剤が残っています。
バーフレット取り外し
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- 1. はんだごてでフレットを暖めます。指版を痛めないように
- 1. はんだごてでフレットを暖めます。指版を痛めないように
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- 2. フレットが暖かくなった頃を見計らって(指で触ると少し厚い程度)、
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- 3. ゆっくり!ゆっくり!
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- 4. 反対のアングルからの写真です。指版にはあらかじめオレンジオイル
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- 5. 抜くコツは、ネックを固定させた上で、真上に徐々に
- 5. 抜くコツは、ネックを固定させた上で、真上に徐々に
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- 6. そして、指版には負担を与えないように、熱的にも素早く
- 6. そして、指版には負担を与えないように、熱的にも素早く
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- 7. フレットが抜けるきるまで、集中力をキープさせます。
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- 8. 抜いたフレットは再利用しますので、ネック側にマークを入れた上で
フレット溝用 埋木と木粉の準備
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- 1. ローズウッド材をフレット溝(=約1.2mm)に合わせて
- 1. ローズウッド材をフレット溝(=約1.2mm)に合わせて
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- 2. 奥にあるのはアルミの角材で、材料をこのガイドにスライドさせながら
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- 3. 切り取った埋木片はこんな感じです。
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- 4. 少々多めですが、スライス作業を終わります。
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- 5. スライスした埋木片はさらに短冊状に切って行きます
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- 6. 次に、同じくローズウッド材をヤスリでこすって粉を作ります
埋木作業 ~ フレット打ち込み
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- 1. フレット溝のクリーニングを最初に行います
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- 2. 上で作った短冊状の埋木片を幅1.2mmのフレット溝に
- 2. 上で作った短冊状の埋木片を幅1.2mmのフレット溝に
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- 3. 埋めている途中です。埋木片の中から同じ高さのものを
- 3. 埋めている途中です。埋木片の中から同じ高さのものを
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- 4. 爪楊枝の先にスポイトからボンドを少量出します。
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- 5. そして埋木の上から一滴ずつ流し込んでいきます。
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- 6. 待避させておいたフレットを埋木の上に置きます
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- 7. 指版を傷つけないようにそっと固定します。
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- 8. 木槌で最初は軽く、全体が溝に入ったのを確認して、最後まで打ち込みます。
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- 9. 打ち込むとボンドがあふれ出てきますので、
- 9. 打ち込むとボンドがあふれ出てきますので、
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- 10. 全フレットの埋木・打ち込み作業が終了しました
フレットすりあわせ
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- 1. フレットすりあわせ作業はバーフレットでもTフレットでも
- 1. フレットすりあわせ作業はバーフレットでもTフレットでも
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- 2. フレットの山の部分だけを残して、マスキングテープで保護します。
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- 3. フレット山の高さをそろえます。Tフレットに比べて
- 3. フレット山の高さをそろえます。Tフレットに比べて
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- 4. 特に谷の部分(背の低いフレット)に注意しながら、
- 4. 特に谷の部分(背の低いフレット)に注意しながら、
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- 5. フレットサイドも専用治具でファイリングします。
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- 6. フレットに丸い山を作ります。こちらも専用のヤスリです。
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- 7. サンドペーパーでファイリングした後、
- 7. サンドペーパーでファイリングした後、
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- 8.. コンパウンドで磨き、光沢を出していきます。
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- 9. ボディプロテクタとマスキングテープをはがします
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- 10. フレットの高さ、形状も問題なくリペアできました。
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- 11. 6弦側の埋木です。ほとんど目立たなく施せています。
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- 12. 1弦側は埋木の量が多く必要でした。
ナット作製
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- 1.. オリジナルナットを参考にエボニー素材スラブにケガキ線を
- 1.. オリジナルナットを参考にエボニー素材スラブにケガキ線を
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- 2. ケガキ線を基準に少し大きめに切り取ります。
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- 3. 切り出したナットスラブ(上)とオリジナルナット(下)です。
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- 4. ナット底と指板側の平面を出していきます。(この作業の出来映えが音響特性を大きく変えます)
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- 5. おおまかなナット形状を削りだしていきます。
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- 6. 6弦位置はそのままで、1弦溝を6弦よりに寄せてほしい、というリクエストを受けておりました。まず、オリジナルの弦溝位置を測定します。
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- 7. それよりも1グリッド幅の狭い溝を6弦溝位置を基準に
- 7. それよりも1グリッド幅の狭い溝を6弦溝位置を基準に
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- 8. 弦溝を掘り込んでいきます。最初の「一切り」が後の出来を左右します。精神集中!です(笑)。
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- 9. 弦高調整前のナットを装着してみました
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- 10. 最初に待避していた弦を張って、ナットの弦高調整を行います。
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- 11. 完成したナット(手前)です。後ろ側はオリジナルナットです。
サドル作製
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- 1. オリジナル・サドルはいわゆるロングサドルで、
- 1. オリジナル・サドルはいわゆるロングサドルで、
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- 2. 蒸気処置を施し、サドルをはずしたところです。接着剤の後が
- 2. 蒸気処置を施し、サドルをはずしたところです。接着剤の後が
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- 3. サドル溝を掃除、かつ底面の平面を出すために
- 3. サドル溝を掃除、かつ底面の平面を出すために
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- 4. 接着剤が思ったより分厚く塗られていました。根気よく削っていきます。勿論、ブリッジには傷を付けないように!
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- 5.. 取り外したオリジナルサドル(右)と象牙スラブ(左)です。
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- 6. 象牙スラブにオリジナルサドルの外形を書き込みます。
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- 7. 外形線に沿ってスラブを切り取ります
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- 8. サドル山の角度をつけていきます。象牙独特の粘りがあります。
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- 9. 山を削り終えたサドルです。
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- 10. さらに左右の曲面を削り込みました。
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- 11. 曲面をブリッジにフィットさせるために微調整を行いました。
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- 12. 反対側も微調整しました。
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- 13. サドルの完成です!