Martin HD-28V
戻る兵庫県にお住まいのH.K.さんからMartin HD-28Vのリペアご依頼をいただきました。(H.K.さんからは昨年Martin
D-42K2リペアをご依頼いただきました)
今回はフレットのすりあわせ、ナット、ブリッジピンのTUSQ化、弦高調整、およびヘッド部異音対策を行いました。
リペア前の状況確認
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- 1. ブリッジピンがピン穴にピッタリとはまっていない状態です。
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- 2. 6弦12フレットの弦高です。3.2mm程度あり、フィンガーピッキングには高すぎる弦高です。
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- 3. ヘッド部(特に3弦ペグ部分)からビビり音のような異音が聞こえます。
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- 4. 1弦と3弦のペグを交換しても異音に変化はありませんでした。
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- 1. ナットを取り外しました。薄く接着剤の跡が残っています。
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- 2. よく研いだ彫刻刀で古い接着剤をこすり取っていきます。
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- 3. クリーニング完了後のナット溝です。
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- 4.TUSQナットスラブをヘッド側(幅の広い方)に合わせてカットします。
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- 5. ナット溝に合わせて厚みを調整していきます。徐々に薄くしていきます。
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- 6. ナット溝にピッタリのスラブが削り出されました。
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- 7. ネックとフィンガーボードとの接触状態を慎重に確認します。
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- 8. 逆光を利用すると、わずかな隙間までチェックすることが出来ます。
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- 9.ヘッド側の放物曲面を削り込みましょう。
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- 10.サイドの緩やかな斜面も削り込みました。
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- 11.オリジナルナットからナット溝専用定規を使って、溝幅を読み取っていきます。
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- 12.新しいナットに弦溝位置をマーキングしていきます。(鉛筆の先はシャープに削っています)
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- 13.弦溝をマーク位置に従って掘り込んでいきます。
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- 14.弦高調整前のナットの完成です。
フレットすりあわせ
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- 1.フィンガーボードをマスキングテープで保護しましょう。フレットだけが覗くようにします。
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- 2.ボディもアクリル板で保護しました。
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- 3.ロッド調整を行い、リリーフを無くした状態で直定規を当て、フレットの凹んだ部分を赤ペンでマーキングしていきます。
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- 4.マーキングされた周囲を局所的にすりあわせます。(この前後の工程を何回も繰り返します)
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- 5.フレット山を丸くする専用のヤスリで整形していきます。
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- 6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。
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- 7.研磨たわし(#600)中研磨します。
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- 8.引き続き、研磨たわし(#800)で細研磨します。
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- 9.最後はコンパウンドでフレットをピカピカに磨き上げます。
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- 10.アクリル板、マスキングテープを取り去ります。
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- 11.フレットすりあわせ完了です。
サドル調整
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- 1.サドル調整を行う前に、状態確認を行っておきます。写真はピッチ確認を行っています。
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- 2.次に弦高測定を行っておきます。
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- 3.全ての弦についてピッチと弦高確認を行い、サドルの高さとピーク位置を割り出しておきます。
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- 4.目標値が確認できたところで、サドル調整を始めましょう。
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- 5.ロングサドルは取り外しが難しいので、ブリッジに装着したままで中性を行います。トップ板とブリッジをアクリル板で保護しましょう。
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- 6.サドル高の調整から行います。オリジナル状態からの低下分だけを局所的に削っていきます。
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- 7.6弦は1.0mm低下させますので、それより少なめの0.9mmの凹みを入れます。
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- 8.凹みの深さはノギスで正確に測定します。
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- 9.同じ要領で全ての弦位置に対して行います。
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- 10.次に凹みが無くなるまでサドルを削っていきます。このとき、上面部が平面になるようにフラットファイルを使用します。
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- 11.途中経過の写真です。まだ凹み部分があることが見えるかと思います。
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- 12.凹み部分が無くなった状態です。これでサドル弦高を目標値に加工できました。
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- 13.次にサドルピーク位置を削りだしていきます。最初に行ったピッチ確認から割り出したオリジナル状態からのピーク位置(移動相対位置)をサドル上面に書き込みます。
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- 14.短いストロークでサドル加工を行うため、根気のいる作業です。
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- 15.フレット側の傾斜加工が終わった状態です。
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- 16.オフセット曲面が強い部分(特に2弦)はミニルーターを使って曲面加工していきます。
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- 17.ピーク位置の削り出しが完了しました。
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- 18.オフセット曲面も自然な形でスムーズに加工できました。
ブリッジピン穴加工
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- 1.ブリッジピン穴加工を行う前のブリッジです。
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- 2.糸鋸の刃を使って、溝を彫り込んでいきます。
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- 3.糸鋸で溝加工を行ったブリッジです。
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- 4.更にミニルーターを使って溝を加工していきます。
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- 5.加工終了後のブリッジです。この加工により、ブリッジ割れを防ぐ効果も期待できます。
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- 6.ブリッジピン穴径も大きくしました。ピンがしっかり奥まで入るようになりました。
弦高調整
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- 1.ストリングリフターで弦を一旦待避させておきます。
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- 2.ナットの弦溝を徐々に深くしていきます。
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- 3.ナット高の確認は2フレットを抑えた状態で、弦と1フレット山との間隙を確認しておこないます。
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- 4.サドル高は上記サドル調整で実施済みです。
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- 5.目標弦高、6弦12フレットで2.5mmに調整できました。
ヘッド部異音対策(ペグブッシュ)
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- 1.リペアを行う前の症状として、特定の音(周波数)に共振してヘッド部から異音(ビビり音)が出ていました。
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- 2.その原因がこのペグブッシュとワッシャにあることがわかりました。問題はワッシャがわずかな隙間の間で振動していました。
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- 3.全てのペグブッシュを取り外しました。
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- 4.ブッシュとワッシャを金属接着します。
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- 5.これは以前にも紹介させていただいた、ゴルフクラブのシャフトとヘッドの接着剤です。(エポキシ超強力タイプです)
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- 6.2液を混合します。
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- 7.ブッシュの六角形の飛び出た部分に薄く接着剤を塗ります。(左側が塗ったもの、右側は塗る前のものです。)
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- 8.ワッシャを接着します。
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- 9.翌日、接着剤の固着を確認しました。
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- 10.かるくペグ穴にブッシュを入れます。
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- 11.ブッシュの挿入は圧着で行います。(打ち込まないように!)
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- 12.ワッシャとともに固定されたペグブッシュです。
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- 13.同じ要領で全てのブッシュを取り付けました。
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- 14.ヘッド部裏面からペグも取り付けました。
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- 15.ブッシュとワッシャの接着は外観上全くわかりません。
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- 16.弦を張って確認して見ましょう。