YAMAHA L-15
戻る京都府にお住まいのN.M.さんから往年の名器YAMAHA L-15のリペアご依頼をいただきました 弦周り中心のリペアを行いました。ハカランダ材のボディはさすがです!1970年代のギター素材の贅沢さを感じさせる音が蘇りました リペア後のギターを受け取りになって、N.M.さんから暖かいメッセージが届きました N.M.さん、ありがとうございました 今後とも、よろしくお願い致します。
昨日、リペアーされたL-15を受け取りました。早速、L-15を弾いたのですが、結構な衝撃でした まず、ギターの演奏性が向上していました。フレット交換と弦高調整の効果でしょうか、非常に弾きやすいギターに変貌していました。それと音量が大幅にアップしていて、ビックリしました。ギター全体で鳴っているという感じでした 弾いているうち、深い低音、豊かな中音、煌びやかな高音に自分の演奏が上手くなったような錯覚に陥り、夜遅くまで弾き込んでしまいました。さらに70年代のヤマハカスタムギターと弾き比べましたが、L-15は音量、音質とも全然負けていません。むしろ、高音は絶対勝っていました。リペアー前後でこんなにL-15が変化するなんて想定外でした 正直申しますと、はじめは不安もありましたので、リペアーをお願いする際に無理を言いまして工房までお邪魔させて頂きましたが、樋口さんの人柄、仕事に対する考え方などをお聞きし、「樋口さんにお願いしたい」と思いました。戻ってきたギターを弾いているうちに「樋口さんはギターの眠っているポテンシャルを最大限に引き出す魔術師」と率直に思いました。以前よりこのギターを手放すつもりはありませんが、もっと手放せない宝物になりました この度は本当にありがとうございます。これからの樋口さんのご活躍をお祈りしています。また、お邪魔させて頂きました際にご対応して頂きました奥様にも宜しくお伝え下さい。
フレット交換
-
- 1. フレットをはんだごてで暖めながら、フレット抜き工具で抜いていきます。
-
- 2. フィンガーボードとバインディングを痛めないようにゆっくり作業を進めていきます。
-
- 3.フレットを抜き終わるまで全神経をフレットに集中させます。
-
- 4.全フレットを抜き終えた後、直定規を当てて、フィンガーボードの平面を確認します。さすがSQ仕様です。弦方向にほぼ完璧な直線です。
-
- 5.軽くサンディングします。フレット溝の縁についた汚れを削り取る程度にします。
-
- 6.サンディング後のフィンガーボードです。
-
- 7.溝に残った削り粉やゴミなどを吸い取っていきます。
-
- 8.フィンガーボードの準備完了です。
-
- 9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
-
- 10.ボディ内部はジャッキで保護しておきます。
-
- 11.フィンガーボードの幅よりも少し大きめにフレットをカットします。
-
- 12.切り取り後のフレット端です。バインディング処理を行います。
-
- 13.タング部分をカットします。
-
- 14.フレット・タング片はカット後、見失わないように確実に収集しておきます。
-
- 15.バインディング処理されたフレット端です。
-
- 16.まず片方を打ち込みます。
-
- 17.もう片方を打ち込みます。
-
- 18.そして中央を打ち込みます。
-
- 19.この要領で打ち込んでいきましょう。
-
- 20.13フレットまで打ち終えました。
-
- 21. 全フレットを打ち終えました。
-
- 22. 打ち込み直後のフレット端はこのように飛び出ています。
-
- 23. 飛び出た部分をカットします。このときもカット片を失わないように確実に指で受けるようにします。
-
- 24.カットしたフレット端はこのようにバリが出ています。
-
- 25. 専用のヤスリでフレット端を斜めに整形していきます。
-
- 26. 反対側(1弦側)も同じようにファイリングしていきます。
-
- 27. ここで一旦フレットの削り粉をクリーニングしましょう。
-
- 28. 整形されたフレット端です。
-
- 29.さらにフレットエンド専用のヤスリで切削角を取り除いていきます。
-
- 30.このヤスリは側面だけがヤスリ面になっており、フィンガーボードがバインディングを傷つけないようになっています。
-
- 31.フィンガーボードをマスキングテープで保護します。
-
- 32.フレットだけをのぞかせてギター保護完了です。
-
- 33.直定規を当てて凹んだフレット山にマーキングしていきます。
-
- 34.今回から登場する金属製のカンナです。広い直平面を確保できます。
-
- 35.裏に粘着材が塗られているStickIt(#120の紙ヤスリ)を使います。
-
- 36.カンナの裏に張るとフラットファイルができあがりました。
-
- 37.直定規でマーキングした凹んでいる部分がすれるように、フレット山をすりあわせていきます。
-
- 38.フラットファイルですりあわせた後のフレット山です。
-
- 39.台形になったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
-
- 40.山が丸くなりました。
-
- 41.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。
-
- 42.フレットが徐々に研磨されていきます。
-
- 43.研磨タワシ(#600)でさらに研磨し・・・。
-
- 44.さらに細かい研磨タワシ(#800)で研磨していきます。
-
- 45.最後はコンパウンドで磨き上げていきます。
-
- 46.仕上がったフレットです。
-
- 47.ギターを保護していたアクリル板とマスキングテープをはがしましょう。
-
- 48.すりあわせを終了し、フレット打ち直しが完了しました。ぴかぴかのフレットはいい音の予感を感じさせてくれます。
ナット溝クリーニング~ナット作成
-
- 1.ナットを外しました。比較的きれいなナット溝です。
-
- 2.よく切れる彫刻刀で古い接着剤とゴミを削り落とします。
-
- 3.ネック側の接着剤も削り取っていきます。
-
- 4.ナット溝のクリーニングが終わりました。
-
- 5.ネックの幅に合わせてナットスラブを切り出します。
-
- 6.ナット底面と側面の平面を削りだしていきます。
-
- 7.ナットがピッタリ密着できるようになりました。
-
- 8.1弦側も密着を確認します。この密着度がギター音色を左右する大きなポイントとなります。
-
- 9.逆光を利用して完全に密着していることを確認します。
-
- 10.次にナット上部加工を行いましょう。フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
-
- 11.上部をカットしました。この段階で側面の調整も行っておきます。
-
- 12.ヘッド側の放物曲面を削りだしていきます。
-
- 13.ナットらしくなってきました。
-
- 14.オリジナルナットの1弦~6弦の幅を読みとります。
-
- 15.弦溝位置を新しいナットに書き込んでいきます。
-
- 16.弦溝を彫り込んでいきます。この段階では浅めに止めておきます(後工程の弦高調整しろを残しておきます)
-
- 17.弦高調整前のナット完成です。
ブリッジピン穴加工
-
- 1.ピン穴の弦導出口を糸鋸でサドル側に寄せます。
-
- 2.糸鋸の跡をミニルーターで切削加工して導出口の角度をつけていきます。
-
- 3.ピン穴加工を終えたブリッジです。
ピッチ調整~サドル作製
-
- 1.イントネータとチューナーを取り付けました。ブリッジ保護のためにマスキングテープを貼り、サドル溝には薄アクリル板(1mm厚)を置いています。
-
- 2.全フレットポジションのピッチを確認していきます。ピッチズレがあれば、イントネーターとペグを調整します。
-
- 3.サドルピーク位置が決まりましたら、紙に控えておきます。
-
- 4.TUSQスラブをサドル溝に合う厚みと幅を切り出しました。
-
- 5.サドルとブリッジは隙間の無いように加工しましょう。(ナットと共にこれがいい音になるポイントです)
-
- 6.前の工程で控えておいた目標サドル高を書き写していきます。
-
- 7.ケガキ線通りにサドルを切り出しました。
-
- 8.ピッチ調整で控えておいた、サドルピーク位置を上部をカットしたサドル上面に書き写します。
-
- 9.サドル上面に書き写されたピーク位置をなぞるようにサドル山を削りだしていきます。
-
- 10.オフセットサドルの完成です。
弦高調整
-
- 1.弦の2フレットを押さえて1フレットと弦の隙間がぎりぎりになるまでナットの弦溝を削り込んでいきます。
-
- 2.ストリングリフターで弦を持ち上げておきます。
-
- 3.弦溝を少しずつ低くしていきます。弦を張り、高さを確認し、の作業を繰り返します。
-
- 4.もう少しのところで止めておき、ナットを接着した後にもう一度下げます。
-
- 5.弦高調整完了後のナットです。
-
- 6.サドル高も調整し終えました。
トップ板・打痕跡リペア
-
- 1.トップ板に打痕跡が数カ所あります。まず、打痕跡の黒ずみを削り取っていきます。
-
- 2.削りかすや油分をベンジンでふき取っていきます。
-
- 3.ラッカーをオリジナル塗装面よりも少し膨らむ程度に重ね塗りしていきます。
-
- 4.数日後、ラッカーが完全に乾燥したところで安全カミソリの刃を使って盛り上がったラッカーを削っていきます。
-
- 5.耐水ペーパーを硬質ゴムに巻いてオーバーラッカーした部分を水研磨していきます。
-
- 6.最後はコンパウンドで磨き上げて終了です。