Martin 2-17
戻る北海道にお住まいのN.T.さんからMartinの超ビンテージギターのリペアご依頼をいただきました。こもった音とビビり音が顕著でしたので、ブリッジ周辺のリペアおよびフレットすりあわせ、弦周りのTUSQ化を含む、トータルリペアを行いました。
リペア前の状況確認
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- 1. ボディ内、ブリッジプレートに弦のエンドポール部分が食い込んでいます。
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- 2. バックボードのブレイシングに剥がれ(割れ)が見られます。
ブリッジ周辺リペア(ブリッジプレート、ブリッジピン穴)
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- 1.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。
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- 2.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておき、プラグの中央にポンチで凹みを入れます。
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- 3.プラグの中央に小穴を開けます。
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- 4.小穴があいたプラグです。まだ、メイプルボードに固定されています。
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- 5.切り出し終えたプラグたちです。
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- 6.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
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- 7.弦を外しました。ブリッジプレートはかなり損傷しています。
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- 8.ブリッジプレートの凹み加工を行います。このカッターを使います。
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- 9.ボディ内にカッターを入れます。
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- 10.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
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- 11.カッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。
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- 12.1,3,5弦の凹み加工が終わった様子です。
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- 13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
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- 14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。
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- 15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
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- 16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。
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- 17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
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- 18.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。
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- 19.翌日、同様にして2,4,6弦のプラグ接着を行います。
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- 20.2弦のブリッジプレートをカットしている様子です
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- 21.2,4,6弦の凹み加工が終わりました。
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- 22.6弦すべてのプラグ接着を終えました。
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- 23.固着したプラグと追加プレートにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
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- 24.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。
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- 25.プラグにブリッジピン穴を開けました。
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- 26.次にブリッジピン穴加工を行いましょう。糸鋸の刃で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
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- 27.糸鋸加工が終わったブリッジです。
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- 28.さらにミニルーターで溝に角度と幅をつけていきます。
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- 29.ブリッジピン穴加工を終えました。
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- 30.弦を張りました。エンドポールがブリッジプレートの上にきれいに並んでいます。
フレットすりあわせ
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- 1.マスキングテープでフィンガーボードを保護していきます。
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- 2.ボディはアクリル板で保護し、すりあわせの準備ができました。
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- 3.直定規を当てて、フレット山が凹んでいる部分にマークを入れます。
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- 4.凹んだ部分がすり合うまでその周囲を削ります。
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- 5.フレットの山を丸くするヤスリ(#300)で平坦になったフレット山を整形していきます。
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- 6.紙ヤスリ(#400)、研磨タワシ(#600、#800)、コンパウンドですべてのフレットを順に研磨していきます。
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- 7.カバーしていたアクリル板、マスキングテープ類を取り除きます。
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- 8.すりあわせを終えたピカピカ・フレットです。
ナット作製
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- 1.リペア前のナット溝です。薄く古い接着剤の跡が見られます。
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- 2.カリカリと彫刻刀で古い接着剤を削っていきます。
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- 3.ネック幅に合わせてTUSQナットスラブを切り出します。
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- 4.ネックとフィンガーボードの接触面の平面を削りだしていきます。
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- 5.ナット位置にピッタリはまるように加工しました。
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- 6.逆光を使うとわずかな隙間も見つけることができます。
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- 7.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れ、上部をカットします。
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- 8.さらにヘッド側の放物曲面を削りだしていきます。
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- 9.ナットらしくなってきました。
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- 10.専用の定規を使って、弦溝位置を書き込みます。
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- 11.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
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- 12.弦高調整前のナットができあがりました。
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- 13.弦を張って弦高調整を行います。この写真は6弦の調整を行っている様子です。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
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- 14.ストリングリフターで弦を待避させておきます。このジグのおかげで弦を緩めたり張ったりすることが必要なくなりました。
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- 15.ナットの弦溝を徐々に掘り下げていきます。削っては隙間を確認し、の繰り返しを行います。
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- 16.ギリギリのところで止めておきます。この要領で他の弦もナット高の調整を行います。
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- 17.弦高調整後のナットです。
ピッチ調整~サドル作製
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- 1.イントネーターとチューナーを取り付けました。
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- 2.すべてのフレットについて最適なサドル山位置を調整していきます。
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- 3.サドル山位置と算出されたサドル高を紙に控えておきます。
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- 4.サドルスラブをサドル溝の幅に合わせて切り出します。
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- 5.サドル溝にぴったりとはまる厚みになりました。
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- 6.サドルを目標高に合わせてケガキ線を入れてカットします。
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- 7.サドル山位置をサドルの上面に書き写します。
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- 8.サドル山を削りだしていきます。
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- 9.ロングサドル特有のサイド・スロープをつけていきます。
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- 10.オフセット・サドルが完成しました。
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- 11.サイド・スロープもブリッジとピッタリです。
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- 12.完成したサドルです。
ブレイシング割れリペア
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- 1.ブレイシングをマスキングテープでカバーします。
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- 2.タイトボンドを適量スポイトに吸い出します。
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- 3.ブレイシングの割れ部分にタイトボンドを流していきます。
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- 4.ナイフでマスキングテープを破って、そのままタイトボンドを割れ目に塗り込んでいきます。
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- 5.このギターは厚みが薄いのでジャッキが使えませんので、硬質スポンジをジャッキ代わりにします。
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- 6.ブレイシング割れのリペア完了です。