Martin O-18NY custom
戻る北海道にお住まいのK.I.さんからMartin HD-28VとMartin O-18NY customのリペアご依頼をいただきました。フレット交換を含む弦周りのリペアを行いました リペア後のギターを受け取られてK.I.さんからとても暖かいメッセージが届きました。
ギター工房オデッセイの樋口様
ギター本日 午前中に届きました
久しぶりに会うギター達を見て おかえりなさい という感じでした
早速チューニングをして いつもの曲を弾いてみました
すごく響くようになっています!
音の響きが部屋中に広がる感じです!
HD-28Vは音がクリアになったようです
音が硬くなったという感じではなく、膜が取れたような本当にクリアという感じがします
O-18NYの方は音が太くなり ボディの響きが大きくなった感じです
低音はHD-28Vには敵いませんが 中高音の響きは負けていません
Martinの美しい気持ちのいい音色は やはりOサイズのマホガニーボディ!!って感じです
リペア初めての私にとって 樋口様に依頼するまでの葛藤…
リペア後のギターを手に取り 樋口様に巡り合えた喜びを感じています…
魔法のような技術と 心のこもった言葉の数々で、今後もギター演奏者の力になって下さい
勝手ながら 私のギター達の主治医と思っていてもよろしいですか?
今後も よろしくお願いしたいです
ギター達を甦らせてくれたお礼を お電話で伝えたいのですが、私は口べたなので 樋口様に不快な思いをさせてしまいそうで、メールにてお許しください(短い文章ですが書き始めから一時間以上かかっています…)
やさしいお手紙までいただきありがとうございました
私の心もとてもクリアになって今までの不安が解消されました
本当にありがとうございました
樋口様もお身体にきをつけて 幸せな毎日を お過ごしください
それでは ありがとうございました
北海道のK.I.より
K.I.さん、とても力づけられる暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。K.I.さんの暖かい気持ちが強く伝わって参りました。
リペア後のギター達が無事お手元に届き、その音色にご満足されたとのことをお聞きして、とても安心致しました
HD-28Vはおっしゃるとおり、何のバリアもなく、弦の振動がボディにダイレクトに伝搬する状態にできたと思います
MartinのロングサドルをTUSQ素材に交換することは初めてでしたので、その効果がどの程度のものになるのか、私も不安でした
リペア後に弦を張って試奏した時、その不安を完全に吹き飛ばす音色に変身してくれました。
また、リペア後のO-18NYは本来の箱鳴りを取り戻し、表現力豊かなギターに変身できたと思います
きっとK.I.さんの元で、ギター達は満面の笑みで音色を奏でてくれ続けてくれることと思います
これからも素晴らしいギターライフをお送りください
> 勝手ながら 私のギター達の主治医と思っていてもよろしいですか?
私でよろしければ、喜んでK.I.さんのギターのメンテナンスを継続させて頂きたいと思います。まだまだ未熟なリペアマンですが、皆様の温かいご支援を支えにして、これからも精進していきたいと思っています。何かございましたら、お気軽にお声がけ頂けましたら幸いです
この度は弊工房にリペアのご依頼を賜り、本当にありがとうございました
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
フレット交換
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- 1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
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- 2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。
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- 3.フィンガーボードの平面性を確認します。
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- 4.軽くサンディングします。
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- 5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
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- 6.ここで一旦削り粉をクリーニングしましょう。
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- 7.フレット打ち込みの準備が整いました。
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- 8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
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- 9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
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- 10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。
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- 11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
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- 12.第一のフレットプレス・ジグです。
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- 13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
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- 14.フレットをプレスします。
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- 15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
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- 16.2つ目のジグはこのように固定します。
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- 17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
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- 18.順にプレスを進めていきます。
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- 19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
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- 20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。
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- 21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
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- 22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。
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- 23.カットしたフレット端です。
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- 24.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
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- 25.1弦側のフレット端も同じように整形します
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- 26.削り粉をクリーニングしましょう。
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- 27.整形されたフレット端です。
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- 28.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。
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- 29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
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- 30.ボディもアクリル板でカバーしました。
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- 31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
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- 32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。
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- 33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
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- 34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。
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- 35.さらに研磨タワシ(#600~#800)で研磨を進めます。
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- 36.最後はコンパウンドで磨き上げます。
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- 37.プロテクタ類を外しましょう。
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- 38.ピカピカのフレットになりました。
ナット交換
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- 1. 当て木を当てて、軽くコンとたたきます。
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- 2.ナットが取り外せました。
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- 3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
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- 4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。
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- 5.クリーニング完了したナット溝です。
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- 6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
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- 7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
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- 8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。
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- 9.1弦側からもナットの密着を確認します。
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- 10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。
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- 11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
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- 12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。
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- 13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
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- 14.ナット上部を切り取りました。
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- 15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
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- 16.ナットらしくなってきました。
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- 17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
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- 18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。
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- 19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
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- 20.弦高調整前のナットです。
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- 21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
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- 22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。
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- 23.6弦のナット高をギリギリまで下げました
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- 24.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
ピッチ調整~サドル作製
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- 1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
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- 2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します
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- 3.サドルピーク位置を書き写しておきます
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- 4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。
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- 5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
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- 6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。
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- 7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
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- 8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。
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- 9.サドル高の切り出しを終えました。
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- 10.サドル上部にピーク位置を書き写します。
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- 11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
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- 12.ブリッジピン穴加工を行います。加工前のブリッジです。
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- 13.まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
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- 14.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
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- 15.ブリッジピン穴加工を終えました。
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- 16.完成したオフセットサドルとブリッジです。