YAMAHA FG-700
戻る兵庫県にお住まいのM.Y.さんからYAMAHA FG-700のリペアご依頼をいただきました。(M.Y.さんは高校時代の同級生で二人でユニットを組んで学園祭に出演した、かつてのパートナーです)
30数年ぶりのトータルメンテナンス・リペアをしました。リペア後のギターを受け取られて、M.Y.さんから暖かいメッセージをいただきました。
高校生の時に樋口君について行ってもらい、このギターを買ったことを思い出します
最初は某有名外国メーカーのも試し弾きさせてもらったけどなんかぱっとせず、最後に行った店でこのギターが「びぃーん」っていう凄くいい音がしたので、迷わず買っちゃったギターでした
長いこと放ったらかしで弾いておらず、最近久しぶりに新しい弦に張り替えてみたものの、音がこもっているような感じでどうももう一つでした
ところが今日受け取りに行って弾いた時には、買った時のあの感動がよみがえってきました。あの「びぃーん」っていう音がする上に、低音なんかは凄く深みのあるいい音になり、弦を新しいものに張り替えたのかと思っちゃいました。またギタリストを始めてみようかなという気になっています
更になんといっても一番嬉しかったのはやはりポジションマークのインレイです
このギター、音はとても気に入っていて何も文句はなかったのですが、とにかく見かけが地味でそれだけが残念でした。当時樋口君の超派手なYAMAKIを見ていたからかも知れないけどね。それで、もっと派手なギターだったらとずっと思っていたのですが、今回とうとうその36年間の願いが叶いました。もうびっくりです。まるで初めから入っていたかのような仕上がりで、技術力の高さに驚いています。緑に輝くアバロンっ、もう嬉しくてうれしくて。これからはケースには入れずにそこらに出して飾って眺めていようと思います
ほんとうにありがとう。長年の夢が叶いました。
M.Y.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、ありがとうございました
ギターを引き取りに来られた際、M.Y.さんが工房部屋でギターを一生懸命弾いているのを見ていて、高校時代のあの頃の想い出が蘇ってきました
FG-700はとても贅沢な部材を使っている上に、適度に枯れているため、素晴らしい音色に蘇ったと思います。フィンガーボードのポジションマークも気に入ってもらえてとても嬉しい気持ちです
こちらこそ、このような機会を与えてくれて、とても感謝しています。
この度は弊工房にギターリペアのご依頼をいただき、ありがとうございました
今後ともよろしくお願い致します。
フィンガーボード・ポジションマーク(インレイ)入れ替え
-
- 1.オリジナルのポジションマークです。円形のホワイト・パールです。
-
- 2.フレットを抜き取りました。(この作業はフレット交換の間に行います。)
-
- 3.オリジナルポジションマークを外すために中央に穴を空けます。
-
- 4.針金で引っかけてインレイを取ります。
-
- 5.ポジションマークが取り外された跡です。
-
- 6.その上にマスキングテープを貼り、新しいインレイの外周を書き込みます。
-
- 7.ジグをドレメル・ルーターに取り付け、外周を彫り込みます。
-
- 8.更に外周から内側へ彫り込んでいきます。
-
- 9.ルーター作業を終えました。
-
- 10.新しいポジションマークがピッタリはまることを確認します。
-
- 11.マスキングテープを剥がしました。この段階では新しいインレイはフィンガーボードから飛び出しています。
-
- 12.インレイを接着した後、エボニーペーストを周囲に流して固着を待ちます。
-
- 13.フィンガーボードと同じアール(湾曲度)のサンディングブロックにサンドペーパーを貼りました。
-
- 14.インレイの飛び出した部分をサンディングしていきます。
-
- 15.サンディング完了です。フィンガーボードと面一になりました。
-
- 16.フレットをプレスし、すりあわせも終えました。
オリジナルのポジションマークを取り除き、新しいものの凹み加工を行っている様子です。
フレット交換
-
- 1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
-
- 2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。
-
- 3.フィンガーボードの平面性を確認します。
-
- 4.軽くサンディングします。
-
- 5.フレット溝に残った粉を掻き出します。この時もフレット溝を傷つけないように注意します。
-
- 6.ここで一旦削り粉を吸い取ります。
-
- 7.フィンガーボードのクリーニングが終わり、プレスの準備ができました。
-
- 8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。
-
- 9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
-
- 10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
-
- 11.フレットの切れ端はタング部分が飛び出ています。
-
- 12.プライヤでタング部分をカットします。
-
- 13.バインディングを避けるようにタング部をカットしました。
-
- 14.最初のフレットプレスジグです。
-
- 15.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
-
- 16.ジグをサウンドホールから入れていきます。
-
- 17.フレットをプレスします。
-
- 18.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
-
- 19.2つ目のジグはこのように固定します。
-
- 20.ネジを締めてフレットをプレスします。
-
- 21.順にプレスを進めていきます。
-
- 22.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
-
- 23.フレットプレスが終わりました。
-
- 24.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
-
- 25.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。
-
- 26.カットしたフレット端です。
-
- 27.専用のヤスリ・ブロックを使ってフレット端を整形します。
-
- 28.1弦側のフレット端も同じように整形します
-
- 29.整形されたフレット端です。
-
- 30.更にフレットエンド・ドレッシング・ファイルでバリを取り除きます。
-
- 31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
-
- 32.ボディもアクリル板でカバーしました。
-
- 33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
-
- 34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。
-
- 35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
-
- 36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。
-
- 37.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
-
- 38.最後はコンパウンドで磨き上げます。
-
- 39.プロテクタ類を外しましょう。
-
- 40.ピカピカのフレットになりました。
ブリッジプレート・リペア
-
- 1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
-
- 2.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。
-
- 3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。
-
- 4.プラグの中央に小穴を開けるためにプラグ中央にポンチで凹みを入れます。
-
- 5.小穴があいたプラグです。まだ、メイプル材に固定されています。
-
- 6.切り出し終えたプラグたちです。
-
- 7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
-
- 8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
-
- 9.カッター部をサウンドホールからボディ内に入れます。
-
- 10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。
-
- 11.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
-
- 12.1弦の凹み加工を終えた状態です。
-
- 13.同じようにして3、5弦の凹み加工を行いました。
-
- 14.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
-
- 15.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。
-
- 16.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
-
- 17.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。
-
- 18.同じようにして3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
-
- 19.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。
-
- 20.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
-
- 21.2,4,6弦の凹み加工を終えた状態です。
-
- 22.6弦すべてのプラグ接着を終えました。
-
- 23.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
-
- 24.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。
-
- 25.プラグにブリッジピン穴を開けました。
-
- 26. 弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。
ナット交換
-
- 1. オリジナルナットです。
-
- 2.当て木を当てて、軽くコンとたたいてナットを取り外します。
-
- 3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
-
- 4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。
-
- 5.クリーニング完了したナット溝です。
-
- 6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
-
- 7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
-
- 8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。
-
- 9.1弦側からもナットの密着を確認します。
-
- 10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。
-
- 11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
-
- 12.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れナット上部をカットしました。
-
- 13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
-
- 14.ナットらしくなってきました。
-
- 15.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
-
- 16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。
-
- 17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
-
- 18.弦高調整前のナットです。
-
- 19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
-
- 20.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。
-
- 21.ナット高調整前の弦溝です。
-
- 22.弦高調整後のナット弦溝です。
-
- 23.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
-
- 24.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。
ピッチ調整~サドル作製
-
- 1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
-
- 2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します
-
- 3.サドルピーク位置を書き写しておきます
-
- 4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。
-
- 5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
-
- 6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。
-
- 7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
-
- 8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。
-
- 9.サドル高の切り出しを終えました。
-
- 10.サドル上部にピーク位置を書き写します。
-
- 11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
-
- 12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
-
- 13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
-
- 14.ブリッジピン穴加工を終えました。
-
- 15.サドルを取り付けました。
-
- 16.完成したオフセットサドルとブリッジです。