Gibson J-45
戻る東京都にお住まいのY.T.さんからGibson J-45のリペアご依頼をいただきました。おそらく1940年代製造と思われ、以前米国にてリペアされた記録がありました 今回は弦周りを中心にリペアを行いました。 リペア後のギターを受け取られてY.T.さんから暖かいメッセージが届きました。
樋口様
昨日J-45到着いたしました。
すばらしいです。問題点がすべて解決しました。
もともと何本かの同年代のJ-45を弾き比べて購入した個体で音ももちろん気に入っていたのですが戻ってきたギターを弾くといやあびっくりですね。これがこのギターの本当の力なんですね
低音は鐘をついたように響き、高音も綺麗に伸びます。寄る年波で弦を1ランク補足したのですがそれでもリペア前よりでかい音が鳴ってます
すごい!
既に65歳(推定)のギターですが、樋口マジックで100歳150歳まで長生きできると思います。
当然自分より長く生きるわけですので死ぬまでに大事にしてくれる後継者を見つけなきゃと思い、ちょいと緊張しています。
本当にお世話になりました。
Y.T.さん、早速の暖かいメッセージをいただきありがとうございました
リペア後(厳密にはリペア中ですが・・・)、オリジナルの弦を張った時のギターの音色は本当に「すごい!」と思いました
と同時に、ギターが微笑んでいる表情に見えました(笑)
古き良きものは大切に受け継がれていって欲しいですね!
この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。
ペグ交換
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- 1.オリジナルペグです。
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- 2.ヘッド部を横から見た様子です。
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- 3.同じ写真です。ペグ・ポールの軸に合わせて線(青)を書きました。
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- 4.ヘッド部に対して傾斜の付いたペグ穴で固定されています。
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- 5.ペグを外しました。
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- 6.ヘッド部厚みも均一ではありません。
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- 7.ヘッド部ネック側の厚みです。約15mmあります。
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- 8.こちらはヘッド部先端側の厚みです。約11mmで、ヘッド部は先端側に向かって約2度の傾斜があります。
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- 9.オリジナル・ペグ穴を埋木して、新たにヘッド部表側に対して垂直なペグ穴を空けます。
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- 10.マホガニ材を切り出し埋木しました。
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- 11.全ての穴を埋木しました。
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- 12.ヘッド部裏側のペグ固定穴跡もマホガニ材で埋木します。
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- 13.ヘッド部表面の垂直を出すために傾斜2度を付けた当て木を作製しました。
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- 14.これはペグ穴加工用ジグです。ヘッド部はマスキングテープで保護しました。
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- 15.ヘッド部に垂直なペグ穴を空けています。
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- 16.新しいペグ穴が空きました。
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- 17.ペグブッシュを取り付けます。
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- 18.少し穴を広げてブッシュ取り付けが完了しました。
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- 19.このままペグを取り付けるとヘッド部傾斜のために隙間が空いてしまいますので当て木を作製することにしました。
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- 20.2度の傾斜の付いた当て木の一部を底面と並行になるように加工しました。
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- 21.この凹みにマホガニ材はめ込みました。
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- 22.そのままサンディングすると傾斜2度の薄板ができあがります。
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- 23.マホガニ材は割れやすい素材です。
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- 24.ペグとヘッド部の接着面にあて板を切り出します。
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- 25.ペグ底面の形状に合わせて型紙を切り出しました。
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- 26.薄板にペグ裏側の外周形を書き込んでいきます。
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- 27.ペグのポール穴とネジ穴を空けました。
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- 28.外周を切り出して当て木の完成です。
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- 29.当て木と共にペグをネジ止めします。
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- 30.当て木が隙間を埋めてペグが完全固定されました。(チューニング性能を確保するにはとても重要なポイントです)
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- 31.ペグ交換完了です。
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- 32.安定かつスムーズなチューニングができるようになりました。
フレットすりあわせ
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- 1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
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- 2.ボディもアクリル板でカバーしました。
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- 3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
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- 4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。
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- 5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
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- 6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。
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- 7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
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- 8.最後はコンパウンドで磨き上げます。
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- 9.プロテクタ類を外しましょう。
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- 10.ピカピカのフレットになりました。
ブリッジプレート・リペア
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- 1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。
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- 2.ブリッジプレートはリペアされていますが、弦の引き込みしろが少ないため、弦の巻き部分がサドルに乗る状態です。
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- 3.メイプル材からブリッジプレート追木を切り出しました。
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- 4.ブリッジプレートに接着しました。
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- 5.ブリッジピン穴を空けました。
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- 6.弦を張りました。
ナット交換
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- 1.オリジナルナットです。
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- 2.ナットに当て木を当てて軽くコンとたたきます。
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- 3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
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- 4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。
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- 5.クリーニング完了したナット溝です。
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- 6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
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- 7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
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- 8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。
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- 9.1弦側からもナットの密着を確認します。
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- 10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。
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- 11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
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- 12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。
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- 13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
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- 14.ナット上部を切り取りました。
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- 15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
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- 16.ナットらしくなってきました。
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- 17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
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- 18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。
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- 19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
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- 20.弦高調整前のナットです。
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- 21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
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- 22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。
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- 23.ナット高調整前の弦溝です。
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- 24.弦高調整後のナット弦溝です。
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- 25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
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- 26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。
ピッチ調整~サドル製作
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- 1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
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- 2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。
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- 3.サドルピーク位置を書き写しておきます
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- 4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。
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- 5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
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- 6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。
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- 7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
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- 8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。
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- 9.サドル高の切り出しを終えました。
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- 10.サドル上部にピーク位置を書き写します。
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- 11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
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- 12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
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- 13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
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- 14.ブリッジピン穴加工を終えました。
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- 15.サドルを取り付けました。ロングサドル・エッジスロープの加工を行います。
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- 16.半丸ヤスリでスロープを粗く削り取ります。
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- 17.粗削りを終えました。
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- 18.サドル面をブリッジ面に対して、少し上あたりで止めておきます。
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- 19.ブリッジ面をマスキングテープで保護します。
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- 20.ミニルーターに円錐ビットを取り付けて少しずつブリッジ面に合うようサドルスロープを低くしていきます。
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- 21.ルーター加工を終えたところです。マスキングテープを少しこするところで止めました。
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- 22.ブリッジ面とほとんどツライチになっています。
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- 23.サドルを取り付けました。
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- 24.完成したオフセットサドルとブリッジです。