Martin D-28
戻る宮崎県にお住まいのT.F.さんからMartin D-28のリペアご依頼をいただきました。(2004年製、2005年製の2本です) 両ギターともフレット交換と弦周りのTUSQ化を行いました リペア後の2本のギターを受け取られて、T.F.さんからとても暖かいメッセージが届きました。
樋口 様
リペアをありがとうございました
樋口様のホームページのリペアの様子をドキドキしながらで眺めていました
ギターが家に着くや否や、急いでケースから取り出し弾いてみました
その音色は、じゃじゃ馬娘がLadyになったような、しっくりと落ち着いた音色になっていました
今まで、シャリシャリ感はあったのですが、まとまりのない音が気になっていましたが、弾いてみてビックリしました
低音域が良く響いてくれています
ハイコードも押さえやすくなっています
リペアでこんなに変わるなんて、ビックリしています
これからもギターを、大事にしていきたいと思います
本当にありがとうございました
追伸、お仕事頑張ってくださいませ^^
T.F.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました
リペア後のギターの音色にご満足頂けて、私もとても安心いたしました
製造年代がほぼ同じMartin D-28が複数本リペア出来て、私自身にとっても大変興味深いリペアを行わせていただいた次第です
両ギターともリペア前はぼやけたような音色で、弦高も高く、仰るとおりじゃじゃ馬状態(?)でしたが(笑)、
リペア後は2本ともD-28本来の音色を取り戻すことができ、演奏性もかなり向上したと思います
これから年月を経ていく中で、もっともっと枯れた音色に変わっていくことが、とても楽しみですね(笑)
T.F.さんの元でD-28兄弟が元気に活躍することをお祈りしております
この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
フレット交換
-
- 1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
-
- 2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。
-
- 3.フィンガーボードの平面性を確認します。
-
- 4.軽くサンディングします。
-
- 5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
-
- 6.フレット打ち込みの準備が整いました。
-
- 7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
-
- 8.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
-
- 9.カットしたフレット端です。
-
- 10.フレットタング部をプライヤーでカットします。
-
- 11.バインディング加工後のフレット端です。
-
- 12.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。
-
- 13.第一のフレットプレス・ジグです。
-
- 14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
-
- 15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
-
- 16.フレットをプレスします。
-
- 17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
-
- 18.2つ目のジグはこのように固定します。
-
- 19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
-
- 20.順にプレスを進めていきます。
-
- 21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
-
- 22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。
-
- 23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
-
- 24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。
-
- 25.カットしたフレット端です。
-
- 26.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。
-
- 27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
-
- 28.1弦側のフレット端も同じように整形します
-
- 29.整形されたフレット端です。
-
- 30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。
-
- 31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
-
- 32.ボディもアクリル板でカバーしました。
-
- 33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
-
- 34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。
-
- 35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
-
- 36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。
-
- 37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
-
- 38.最後はコンパウンドで磨き上げます。
-
- 39.プロテクタ類を外しましょう。
-
- 40.ピカピカのフレットになりました。
ナット交換
-
- 1.オリジナルナットです。
-
- 2.当て木を当ててコンとたたきます。
-
- 3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
-
- 4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。
-
- 5.クリーニング完了したナット溝です。
-
- 6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
-
- 7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
-
- 8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。
-
- 9.1弦側からもナットの密着を確認します。
-
- 10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。
-
- 11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
-
- 12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。
-
- 13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
-
- 14.ナット上部を切り取りました。
-
- 15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
-
- 16.ナットらしくなってきました。
-
- 17.目標弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
-
- 18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。
-
- 19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
-
- 20.弦高調整前のナットです。
-
- 21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
-
- 22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。
-
- 23.ナット高調整前の弦溝です。
-
- 24.弦高調整後のナット弦溝です。
-
- 25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
-
- 26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。
ピッチ調整~サドル製作
-
- 1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
-
- 2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。
-
- 3.サドルピーク位置を書き写しておきます
-
- 4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。
-
- 5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
-
- 6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。
-
- 7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
-
- 8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。
-
- 9.サドル高の切り出し、サドル上部にピーク位置を書き写します。
-
- 10.サドルピーク位置を削りだしていきます。
-
- 11.サドル山を削り出します。
-
- 12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
-
- 13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
-
- 14.ブリッジピン穴加工を終えました。
-
- 15.サドルを取り付けました。
-
- 16.完成したオフセットサドルとブリッジです。