Martin D-18
戻る北海道にお住まいのM.O.さんからMartin D-18のリペアご依頼をいただきました。経年収縮したピックガード交換と弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、M.O.さんから暖かいメッセージが届きました。
樋口 様
この度、初めてギターのリペアをお願いしました
私は趣味でギターを爪弾く程度なので、最初はピックガードの剥がれがけを気にしていました
診断結果は、ネック元起きがありました
リペアは総合的な物と判断しましたが、今回はネックの修理は見合わせました
予算の都合と、大手術がなんとなく気乗りしませんでした
今回ギターが届き、暫定的なリペアですが、最大限復活しました!
サドルとブリッジ高の適正化により、弦高が最適化され、なんと弾きやすいことか!
今まで、なんとなくハイコードが弾きづらいな・・・とか思っていましたが、それは普段、あまり弾いていないので、しょうがない、で済ませていました
おおげさですが、以前は琴を弾いている感じでした
今回は、指板とフレットと指が一体になった感じです
そして、弱音では判りづらいですが、強く弾くとクリアー感が増しました
楽器を、ほったらかしにした自分を反省しました
長い年月の劣化が、一気にリフレッシュした感じなのです
数年後、ネックとブリッジプレート、フレットのリペアをお願いしようと思っています
とにかく、今回は体の近くでギターが響き鳴っている感じに感動しました!
楽器に、愛情を注ぐ事、適正なコンデションを保つ事、それを復活出来る事、を樋口様のおかげで確認出来ました
本当にありがとうございました。
M.O.さん、暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました
今回は完全なリペアメニューではなく、もっと改善できたのではないか、と少し残念に思っておりますが、
ご依頼された範囲内で最大限調整させていただいたリペア後のギターにご満足いただけてホッと安心しております
今回のリペアでTUSQ化だけでもマホガニーの音色を際立たせることができることを再認識いたしました
またリペアが必要になりました際には、お気軽にご連絡いただければ幸いです
お待ちいただく期間を長くなっており、誠に申し訳なく思っておりますが、リペアご予約を頂戴出来れば幸いです
この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
ピックガード交換
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- 1.オリジナル・ピックガードです。
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- 2.経年収縮によって周囲に浮きが見られます。
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- 3.トップ板にも負担がかかりますので交換します。
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- 4.ピックガードを剥がしましょう。
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- 5.トップ板を傷つけないようにナイフを挿入していきます。
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- 6.ピックガードが完全に外れるまで慎重にナイフを進めます。
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- 7.外れました。
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- 8.収縮力に耐えたトップ板も大丈夫でした。
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- 9.TOR-TIS素材(50’s Vintage)にオリジナルよりも少し大きめに外周を書き込みます。
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- 10.素材をお湯で暖めながら切り出しました。
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- 11.少量の両面テープを貼ります。(あまり多く使うと剥がすときに大変なことになります)
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- 12.収縮しているオリジナルをテンプレートとします。
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- 13.周囲を削っていきます。
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- 14.常温でTOR-TS素材はとても堅く、もろい性質ですので、少しずつ削っていきます。
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- 15.両面接着シートを少し大きめに切り出します。
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- 16.シートを張った後、外周を切り取ります。
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- 17.マグネットクランプで仮止めした後、位置決めマークをしていきます。
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- 18.ピックガード交換完了しました。
ナット交換
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- 1.オリジナルナットです。
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- 2.当て木を当ててコンとたたき、スライドしてナットを取り外します。
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- 3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
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- 4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。
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- 5.クリーニング完了したナット溝です。
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- 6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
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- 7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
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- 8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。
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- 9.1弦側からもナットの密着を確認します。
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- 10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。
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- 11.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
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- 12.ナット上部を切り取りました。
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- 13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
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- 14.ナットらしくなってきました。
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- 15.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
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- 16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。
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- 17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
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- 18.弦高調整前のナットです。
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- 19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
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- 20.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。
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- 21.ナット高調整前の弦溝です。
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- 22.弦高調整後のナット弦溝です。
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- 23.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
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- 24.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。
ピッチ調整~サドル作製
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- 1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
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- 2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。
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- 3.サドル山位置を書き写していきます。
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- 4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。
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- 5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
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- 6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。
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- 7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
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- 8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。
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- 9.サドル高の切り出しを終えました。
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- 10.サドル上部にピーク位置を書き写します。
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- 11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
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- 12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
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- 13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
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- 14.ブリッジピン穴加工を終えました。
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- 15.サドルを取り付けました。
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- 16.完成したブリッジとサドルです。