Hiroshi Tamura P100

Hiroshi Tamura P100

神奈川県にお住まいのK.D.さんからGibson J-45と田村廣 P100のリペアご依頼をいただき、田村廣 P100はフレット交換とナット、サドル交換を行いましたリペア後のギターを受け取られて、暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ
樋口様

ギターリペアありがとうございましたゆっくり弾く時間がとれず、遅くなってしまいましたが、感想をお知らせします
Gibson J-45
トータルリペアで、全く違う楽器になった！
そんな感じです。低音の響き、高音の伸び、これまでに弾いていた同じギターなのかと、ただ驚きですリペアのきっかけは、ハイフレットの押さえにくさ、音程のずれが気になったことです樋口さんの提案で、フレット交換を含めたトータルリペアになりましたが、それに見合う結果を出してもらえました弾きやすくなっただけでなく、このギターが持つ最高のパフォーマンスを引き出してもらえたように思います
田村廣　P100
名工　故田村廣さん製作のクラシックギターで、ハカランダの響きがとても気に入っているギターですネックリセットができなかったのは残念でしたが、フレット交換、サドル、ブリッジ交換で弦高が低くなり、格段に弾きやすくなりましたまたフレットの交換でビビリがなくなり、きれいな音が響くようになりましたこれからも大切に弾いていきたいと思います
リペアにはそれなりの予算はかかりましたが、とても満足しています次の機会にもよろしくお願いいたします。

K.D.さん、とても暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました
両ギターともにリペア前は経年消耗が顕著でしたが、弦周りをリフレッシュすることで本来持っている潜在能力を発揮できるようになったと思いますリペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちで一杯です
これからも素晴らしいギターライフをお送りください
この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

1.オリジナル・フレットです。フレット山部分がほとんど残っていません。
2.交換後のフレット山です。フレット山の高さと頂点部の湾曲度が確保されました。
3.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
4.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。

5.フィンガーボードの平面性を確認します。
6.軽くサンディングします。
7.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
8.ここでフィンガーボードをクリーニングします。
9.フレットプレスの準備が整いました。
10.第一のフレットプレス・ジグです。
11.フラット先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
13.サウンドホールからジグを入れていきます。
14.ハンドルを回してフレットをプレスします。
15.ボディとネックの接合部分付近まで第一のジグでプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。
17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。
19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。

21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。
23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。
25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端を整形している様子です。

27.整形されたフレット端です。
28.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。
29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。
31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。
33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ（#400）で粗研磨します。
35.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。
37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたき、スライドして取り外します。

ナットを取り外している様子です。

3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。
5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。
9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。
11.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
12.ナット上部をカットしました。
13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
14.ナットらしくなってきました。
15.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。
17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
18.弦高調整前のナットです。
19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
20.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。
21.ナット高調整前の弦溝です。
22.弦高調整後のナット弦溝です。
23.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
24.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。
25.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。
26.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
27.目標サドル高をサドルに書き込んでいきます。
28.サドル高の切り出しを終えました。
29.サドルピーク位置を削りだしていきます。
30.サドル交換完了です。