ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Taylor 614ce

戻る
Taylor 614ce
千葉県にお住まいのN.I.さんからTaylor 614ceのリペアご依頼をいただき、ネックリセット、フレット交換などを含むトータル・リペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られて、N.I.さんからとても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ
樋口様

本日、ギターが届きました。同封のお手紙も拝読しました。
修理をお願いして良かったです!!

今までの各弦のバランスの悪さはは何だったのかと疑問に思うほど、音質、音量のバランスが素晴らしく、軽やかに鳴ってくれるギターになっていました。
弦高をギリギリまで低くしたとの事でしたが、ビビりが出てしまうこともなくストロークした時のメイプルサイドバック特有のまとまりの良さも健在で気持ち良く弾けるギターになっていました。
交換したピックアップも扱いやすく、しかもノイズもなく市販の後付けPUがこんな優れているとは知らなかったので本当に驚いてしまいました(笑)

ガタガタだったギターが、ライブでガンガンに使えるギターに復活して本当に感謝です。
ありがとうございました!!
他のギターも不具合が生じた際はぜひお願いしたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

N.I.さん、とても暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

今回ボルトオン・ネックでのネックリセットを施させていただきましたが、これまでのダブテイル・ジョイントの経験を生かして、ネックとボディの接合最適化を最も重視させていただいた次第です。
リペア前はネックとボディの接合部のシムに紙製の物が挟まっていましたが、今回マホガニ材のシムを新たに製作した上で ネック取り付け角度を調整しました。
音響特性の向上は、シム再作製によるギターの一体化が功を奏したと考えています。
勿論、ネックリセットによる弦高低下、演奏性の向上も大きく見られる結果となりました。

リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。
これからも蘇った614ceがN.I.さんのギターライフの中で大活躍することをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

ネックリセット

ネック取り外し

1.サウンドホールからネック側を覗いています。
2.ネックブロックに2本、フィンガーボード裏に1本ボルトが見えます。

3.ネックブロック側ボルト取り外し用ソケットです。
4.こちらはフィンガーボード取り外し用レンチです。

5.これらを使ってネックを取り外します。
6.フィンガーボード裏のボルトを先に取り外します。

7.レンチをボルトにフィットさせてゆっくり回します。
8.次にネックブロック側のボルトを取り外します。

9.こちらもフィットさせてボルトを回します。
10.ジグ取り付けが完了しました。

ネック取り外しの様子です。


11.ボルトオン・ネックジョイントがはずれました。
12.ネックジョイント部です。

別角度から見たネック取り外しの様子です。


ネック接合部調整

13.ネック側にマホガニ材と紙製のシムが挟まっていました。
14.フィンガーボード側にも同様に2枚のシムが挟まっていました。

15.紙のシムは弦の振動を吸収してギターの音色を抑えてしましますので、マホガニ材から一枚物の新しいシムを作製します。
16.フィンガーボード側も同様にマホガニ材からシムを削り出します。

17.シムとマホガニ材を両面テープで仮接着します。
18.オリジナル・シムをテンプレートにして周囲をルーティングします。

19.ベアリング付きのルータービットを用いてマホガニ材の周囲を削っていきます。
20.部材が割れないように慎重に切削していきます。

シムを作製している様子です。


21.コピーシムを削り出しました。
22.厚みを調整してネックの取り付け角度、直線性、そしてピッチ調整範囲を確定していきます。

23.シムを加工しながら調整を進めます。
24.ネック取り付けの直線性を確認します。直線けがき線の入ったアクリル板をネックからブリッジにかけて乗せます。

25.ナット部分センター位置にケガキ線を合わせます。
26.ブリッジ部分も同様にセンター位置にケガキ線を合わせます。

27.さらにネックとボディの接合部(14フレット)のセンター位置にケガキ線が乗っていることを確認します。
28.ネック取り付け角度も同時に確認します。

29.フィンガーボード面がブリッジの上面を指すように調整します。
30.ネック接合の準備が完了しました。

ネックとボディの直線性と取り付け角度を確認している様子です。


ネック再接合

31.取り外したのと同様にボルトでネックを固定します。
32.取り付け完了しました。

ネックを再接合している様子です。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

11.タングニッパでタング部をカットします。
12.タング部処理を終えたフレット端です。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.ハンドルを回してフレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。

ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。
4.ナット溝のクリーニングを行います。ナット溝に残った不要物を削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。ナットが溝と直接触れることによってギターの音色の改善が期待できます。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル高を切り出したサドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。

ピックアップ交換

1.Taylor社オリジナルのピックアップが搭載されていますが、動作不安定のため交換します。
2.エンドピンジャック部です。バッテリーホルダも併設されています。

3.新しいピックアップはL.R.Baggs社製のAnthem SLです。
4.エンドピンジャック・ブロックを取り外しました。

5.ジャック部分を取り外しました。
6.Anthem SLのプリアンプ・ブロックは江戸ピンジャックと一体になっています。

7.ジャックを取り付けました。
8.ハウジングをそのまま流用できました。

9.アンダーサドルピエゾを取り付けます。
10.コンデンサマイクをブリッジプレートに取り付けました。

11.ボリュームコントロールをサウンドホール際に取り付けました。
12.クリアにギターの振動をピックアップすることが出来るようになりました。