ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

東海楽器 HummingBird Custom

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東海楽器 HummingBird Custom
熊本県にお住まいのY.S.さんからYAMAHA L-5と東海楽器 HummingBird Customのリペアご依頼をいただきました。東海楽器 HummingBird Customはフレット交換、ブリッジプレート・リペアを含むトータルリペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られてY.S.さんから、とても暖かいメッセージが届きました。

Y.S.です。ギター到着しました。

嫁よりLINEで「貴方の愛娘が帰ってきたよ」(私は彼女と思っていますが)との連絡が、急いで帰宅し先ずは梱包を確認、お風呂で身体を清めていざ開封!懐かしいその姿が帰って来ました。(たったの3ヶ月ですが)

同封のメッセージにうるっとしながらチューニングしますと、リペアされたほとんどの皆さんが口にされていた「サステインの伸び、長さ」をすぐに実感、料理中の嫁が「音が伸びるねぇ」と、チューニング聞いただけで言っています。

黒ギター(東海ハミングバード)は中学一年の時購入、45年間ほぼ毎日触っており、側に居ないとこんなに寂しいのかと、お留守番のオベーションエリートを弾きながら思っておりました。

久しぶりのネックの感触、いつもの低音の響きが倍増、ストロークの際バラバラでまとまりの無い音だったのが、美しい和音となりました。また、ハイフレットでの音痴?もなくピタッと完璧な音が出ます。素晴らしいです。

高校一年の時購入したヤマハL5は数年前にナットが破損してから弾けていませんでした。今回のリペアで「おお、これが噂の鈴なりでは?」と思える、沢山の鈴が共鳴しているかのような音色にびっくりしました。

二本とも大満足です。ただ、張られたゲージは私には硬いので次はライトなものに変えようと思います。 そして今回見積りになかったリペアを2つもしていただきありがとうございます。

色々悩みましたがお願いして大正解でした。
本当にありがとうございました。

Y.S.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

年季の入ったギター2本をリペアさせていただいて、Y.S.さんの青春時代の想い出や、ギターへの大きな思い入れを強く感じた次第です。
オーナー様のギターへの想いはこのような形で現れるんだぁな、と素晴らしい音色とともにリペア後の試奏をさせていただきました。

今回のリペアで2本ともとても元気なギターに蘇ったと思っています。
これからもかわいい愛娘さんたちと素敵なギターライフをお送りください。
奥様にもよろしくお伝えください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

11.第一のフレットプレス・ジグです。
12.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.ハンドルを回してフレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


27.整形されたフレット端です。
28.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチールウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。

ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

プラグを切り出している様子です。


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。
4.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。

5.小穴があいたプラグです。まだ材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工を終えたブリッジプレートです。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.アクリル板を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24.弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。

ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて取り外します。

ナットを取り外している様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。
4.ナット溝のクリーニングを行います。ナット溝に残った不要物を削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。ナットが溝と直接触れることによってギターの音色の改善が期待できます。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル高を切り出したサドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。

経年消耗・破損部分リペア

フィンガーボード浮きリペア

1.リペア前のネック上部です。
2.フィンガーボードがネックから浮いています。

3.浮き接着部分をマスキングした後、タイトボンドを流し込んでいきます。
4.クランプで固定して固着を待ちます。

ブレイシング割れリペア

5.ボディ内Xブレイシングに割れが見られます。
6.割れ部分にボンドを流し込んだ後、クランプで固定し固着を待ちます。

ピックガード脱着

7.リペア前のピックガードです。
8.浮きが見られるので一旦取り外して再接着しましょう。

9.取り外しています。
10.取り外すと古い接着剤が大量に確認できました。

11.接着面をクリーニングしました。
12.両面接着シートを貼って位置決めを行い、脱着完了です。

バックボード割れリペア

1.リペア前のバックボードです。
2.陥没穴が見られます。

3.サウンドホールからボディ内を覗きました。穴は貫通している状態です。
4.ボディ内から補強するパッチ材を切り出しました。

5.陥没穴をパッチ材で塞ぎました。
6.ボディ外側からラッカーペーストを塗っていきます。

7.ペースト乾燥後、レベル合わせのサンディングを行いました。
8.補修後のバックボードです。陥没穴はほとんど目立たなくなりました。