Furch G23CRCT
戻る兵庫県にお住まいのM.O.さんからFurch G23CRCTのリペアご依頼をいただきネックリセット、フレット交換、弦周りのTUSQ化などを含むトータルリペアを行いました。このギターは以前にヘッド部折れなどのリペアを行った個体で、今回はネック状態、弦周りの経年消耗をリペアさせていただきました リペア後のギターを受け取られて、M.O.さんからとても温かいメッセージが届きました。
リペアありがとうございました
帰ってきたフォルヒを何日か弾きました
ローフレットからハイフレットまで指板全体で押弦しやすく、とても心地よいです
弾きやすく、音も気持ちよく、音と弾きやすさが絶妙なバランスです。ずっと弾いちゃいますね
今までも、それなりに鳴っていると思ってましたが、音の色気や芳醇さが増し、強弱や抑揚がつけやすくなった気がします。
特に、ラインでアンプに繋いだ時の音に感動しました
あまりEQをいじる必要がなく、6弦の音のバランスが良くなったと感じました
以前より低音が抑えられ、中高音域を目立つように感じたのですが、あえてそうしたチューンにされたのでしょうか?それとも、このギター本来の音響特性が発揮されるようになったということでしょうか?向学のため、その点だけ教えていただければと思いました
フォルヒの透明感あるしっとり系の鈴鳴りが好きなので、これからもずっと大切にします。お世話になりました。
M.O.さん、暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました
Furchギターのネックは柔らかめですので、ネック反りと元起きの判断が難しいのですが、今回のリペアで、ネック元起きに起因する障害を取り除くことが出来ました
リペア後は、ほぼ完璧な弦周り状態を取り戻すことができて、演奏性と音響特性の向上が見られました
ピックアップを通された音色の改善は、本来の状態を取り戻したギターの音色を拾ってくれるようになった効果だと思います
これからも素敵なギターライフをお送りください。心からお祈りしております
この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
ネックリセット
ネック取り外し
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- 1.サウンドホールからネックブロックを確認しています。ボルトオンネック・ジョイントです。
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- 2.ボルトにフィットするレンチを準備します。
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- 3.ボルトを緩めています。
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- 4.ネックジョイントがはずれました。
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- ネック取り外しの様子です
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- 別角度から見たネック取り外しの様子です
ネック調整
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- 5.ネックヒール部です。マスキングテープを貼り、この部分の微妙な高さを目安に作業を進めていきます。
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- 6.ヒール部分を削っていきます。
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- 7.目標のヒール高が削り出せました。これに合わせてネック接合部を調整加工していきます。
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- 8.ネック接合部を削っていきます。フィンガーボード側(右)は削らず、ヒール部(左)だけに傾斜を持たせるように加工していきます。
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- 9.同様に反対側も切削加工を行います。少しずつ慎重に削っていきます。
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- 10.ヒール先端部はよく研いだノミで削ります。
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- 11.ボディ側ネックスロットの外側にマスキングテープを貼ってボディを保護します。
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- 12.ネックとボディの間にサンドペーパーを挟みます。
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- 13.ネックをボディに密着させながらサンドペーパーを抜き取ります。
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- 14.ネック取り付けの直線性を確認します。直線けがき線の入ったアクリル板をネックからブリッジにかけて乗せます。
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- ネックヒール部を調整している様子です
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- 15.ナット部分センター位置にケガキ線を合わせます。
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- 16.ブリッジ部分も同様にセンター位置にケガキ線を合わせます。
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- 17.さらにネックとボディの接合部(14フレット)のセンター位置にケガキ線が乗っていることを確認します。
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- 18.ネック接合の準備が完了しました。
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- ネックとボディの直線性と取り付け角度を確認している様子です
ネック再接合
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- 19.ネックとボディをクランプで仮固定します。
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- 20.ボルトでネックを固定していきます。
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- ネックを再接合している様子です。
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- 別角度からです。
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- 21.リセット後のネックヒール部です。
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- 22.ネックとボディの密着度はギター全体からの出音の要です。
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- ネックリセット後の様子です。
フレット交換
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- 1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
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- 2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。
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- フレットを抜いている様子です
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- 3.フィンガーボードの平面性を確認します。
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- 4.軽くサンディングします。
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- 5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
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- 6.フィンガーボードをクリーニングします。
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- 7.フレットプレスの準備が整いました。
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- 8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。
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- 9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
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- 10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
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- 11.タングニッパでタング部をカットします。
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- 12.タング部処理を終えたフレット端です。
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- 13.第一のフレットプレス・ジグです。
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- 14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
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- 15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
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- 16.ハンドルを回してフレットをプレスします。
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- 17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
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- 18.2つ目のジグはこのように固定します。
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- 19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
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- 20.順にプレスを進めていきます。
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- 21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
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- 22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。
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- フレットプレスの様子です
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- 23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
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- 24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。
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- 25.カットしたフレット端です。
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- 26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。
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- 27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
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- 28.1弦側のフレット端も同じように整形します
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- フレット端整形の様子です
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- 29.整形されたフレット端です。
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- 30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。
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- 31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
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- 32.ボディもアクリル板でカバーしました。
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- 33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
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- 34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。
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- 35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
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- 36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。
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- 37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
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- 38.最後はコンパウンドで磨き上げます。
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- 39.プロテクタ類を外しましょう。
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- 40.ピカピカのフレットになりました。
ナット交換
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- 1. オリジナルナットです。
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- 2.当て木を当ててコンとたたいて外します。
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- ナット取り外しの様子です
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- 3. ナットを取り外したナット溝です。
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- 4.ナット溝のクリーニングを行います。ナット溝に残った不要物を削り取っていきます。
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- 5.クリーニング完了したナット溝です。ナットが溝と直接触れることによってギターの音色の改善が期待できます。
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- 6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
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- 7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
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- 8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。
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- 9.1弦側からもナットの密着を確認します。
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- 10.逆光を利用すると密着状態の確認が効率的に行えます。
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- 11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
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- 12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。
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- 13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
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- 14.ナット上部を切り取りました。
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- 15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
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- 16.ナットらしくなってきました。
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- 17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
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- 18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。
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- 19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
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- 20.弦高調整前のナットです。
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- 21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
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- 22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。
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- 23.ナット高調整前の弦溝です。
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- 24.弦高調整後のナット弦溝です。
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- 25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
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- 26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。
ピッチ調整~サドル作製
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- 1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
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- 2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。
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- 3.サドル山位置を書き写していきます。
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- 4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。
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- 5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
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- 6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。
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- 7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します
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- 8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。
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- 9.サドル高の切り出しを終えました。
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- 10.サドル高を切り出したサドル上部にピーク位置を書き写します。
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- 11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
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- 12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
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- 13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
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- 14.ブリッジピン穴加工を終えました。
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- 15.サドルを取り付けました。
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- 16.完成したブリッジとサドルです。
ブレイシング剥がれリペア
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- 1.サウンドホールからボディ内を覗いています。
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- 2.向かって右側、一番下のブレイシングです。
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- 3.ボディ向かって左側、下から2番目のブレイシングです。
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- 4.左側一番上のブレイシングです。バックボード全体にブレイシングが浮いています。
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- 5.浮き部分にマスキングテープを貼って保護した後、タイトボンドを乗せました。
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- 6.ナイフでボンドを浮き部分に流し込んでいきます。
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- 7.ジャッキで固定しました。
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- 8.他のブレイシング浮きも同様に固定しました。
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- 9.こちらも同様に固定しました。
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- 10.このまま固着を待ちます。